“おじょんこ”とは
冬の防寒着”おじょんこ”
「おじょんこ」は、福島県いわき市内でも広く着用された綿の入った防寒着のことです。オチョンコ、ソデナシとも呼ばれます。袖がないため動きやすく、また背中から腰まで覆われるため、非常に暖かいのが特徴です。特に、山間部の三和地域では、山仕事などをするときに重宝されました。

いわきでは、オチョンコ等とも呼びます。三和の”おじょんこ”は、背まちが入っているので、ゆったりとしているのが特徴です。
布の一枚一枚がとても貴重だった時代、女性たちは古くなった着物などを利用して、「おじょんこ」を縫いました。中途半端な端切れを大事にとっておき、それを色合いなども考えてはぎ合せ、子ども用から大人用まで、自在に、そして丁寧に縫い上げていったのです。
山仕事などの普段着用のほかに、お出かけ用のちょっとオシャレな「おじょんこ」もあったそうです。また、地域によっては、春になると一度ほどいて綿を抜き、秋になると再び綿をいれるという使い方もされました。「おじょんこは、着るとクセになる」ともいわれ、老若男女を問わず愛されましたが、昭和から平成にかけて、安くて軽く、また保温性に優れる既製品の衣類の普及により、次第に姿を消していきました。
“おじょんこ”を次の世代へ
「おじょんこ」が姿を消すとともに、女性たちに受けつがれていた「おじょんこ」づくりをはじめとする針仕事の文化も消えていきました。伝統的な地域の文化を大切に継承している三和地域でも、「おじょんこ」を作れる人はご高齢となり、教えてくださる方も少なくなってきています。
そこで、そうしたみなさんがお元気なうちに、その技や知識を教えていただこうと、三和地域に住まうお二人の女性を指導者としてお迎えし、サークルを立ち上げたのが私たちの活動のはじまりです。
「おじょんこstyle@上三坂」設立
豊かな里山文化を次の世代へ
2018年4月、「いわき市まち・未来創造支援事業・まちづくり活動(スタートアップ)支援事業」の助成を受け、以下のような目的をもって「おじょんこstyle@上三坂」が設立されました。
- 「おじょんこ」づくりの技術とその文化をうけつぎ、次の世代へ伝えていくこと。
- 「おじょんこ」づくりを通じて、三和地域に伝承されている豊かな里山文化の再発見と伝承、その魅力の発信を行うこと。
東日本大震災後、築100年の古民家をリノベーションして開設されたコミュニティスペース「OJONKO館」に拠点を置き、現在も、十数名の会員で活動を続けています。
設立にあたって
阿武隈高地に位置するいわき市三和町では、女性たちの針仕事で伝承されてきた 「袖無し綿入れ袢纏=おじょんこ」という伝統衣類が、昔から愛用されています。
袖がなく動きやすく、着脱がし易い、農作業に勉学にと重宝です。 縫い合わせ方が特殊で、かつ縫い込む量も多く、非常に手間がかかりますが、それだけに丈夫で暖か、冷涼な地域が産んだ優れ物と言えるでしょう。
しかし、作り手も70代後半から80代の方がほとんどで、このまま放っておいてはこの伝統が耐えてしまいかねません。
そこで、三和地域で伝承活動をされている若松律子氏、佐藤ミヨ子氏のご指導を受け、 おじょんこを伝承する会を上三坂で立ち上げ、活動をスタートさせました。
和裁に不慣れで縫い上げるにも大変時間がかかりましたが、先生のご指導と、地域の先輩たちの手助けもあり、なんとか一人1着完成させることができました。
地域のお祭りで子供たちにプレゼントした「Baby おじょんこ」が大人気となり、若い方へ裾野を広げることにもつながりました。また私たち初心者の練習用として も大変役立ちました。
会場は OJONCO 館。三代続いたお医者様の家だった、築100年の土蔵造り古民家で、地域交流館として再生されたとっても素敵なところです。
以上の活動を通して、おじょんこ作りの担い手を育成し、里山の魅力を市内外に知っていただき、地域活性化にも寄与したいと思います。
皆様のご参加をお待ちしております。
2019年1月
おじょんこ Style@上三坂
代表 吾妻 美和子